水道民営化なぜ?水道法一部改正によるメリットや不安を考察

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今騒がれている水道民営化問題。厳密にいえば民営化ではないのですがなぜ民間企業に運営をまかせるため水道法を一部改正したのか考察してみます。

水道法一部改正の理由と「民営化とコンセンション方式の違い」

水道法を一部改定した理由ってなんなん?

水道法の一部改正が必要となった背景としては主に
  • 水道管などの老朽化
  • 人口減少による料金収入の減少
  • 水道職員の削減による体制の弱体化

があげられる。

蛇口をひねれば出てくる綺麗な水に対し、私たちはあたりまえという感覚でいるが、当然莫大なコストをさいてそれは成り立っている。

まず、水道管の課題がやばい。水道管路の法定耐用年数は40年とされていて、古く老朽化された水道管は当然交換していくわけなのだが、高度経済成長期に整備された施設の更新がどうもうまく進んでいないらしい。なにがまずいかというと高度経済成長期に整備された施設・水道管は耐震性が低く昨今頻発している震災などに課題があり、耐震適合性のある管路は全国でたったの37.2%(平成28年5月24日国土強靭化推進本部決定)にとどまっている模様。

管路更新率という数値があってH27年度の0.74%という数値で単純に計算すると全ての老朽化した水道管路を更新するのには130年以上かかるという計算になるという。

これだけでもまずい状況だと思うのだが、人口減少により水道水自体の消費量が減り料金収入の減少により、コスト削減、そして水道職員の削減。結果的に体制が弱体化され、事業としては火の車。さて困ったものだ。

まとめるとこんな感じが水道水事業の現状の問題点ということ。

厚生労働省の資料によると、今後30年で、上の図のように老朽化の水道管が増えていくとのこと。赤いグラフが経年管路(布設後40年経過)する予定の400,000kmという途方もない長さの管路です

大震災とか台風とかで水道管破裂とかも結構たくさん起きているわけでやはりそもそもの課題はかなり深刻だな。

現状の体制で水道水を値上げをしてなんとかなればよいのでしょう。でも値上げしたところで解決できない一過性の改善にしかならない。今後もインフラとして技術力の維持・継承が必要というわけだ。

現状の課題はこんなところで、じゃあどうやって解決しようか―という解決策として今回話題となっているのが「コンセンション方式」の採用である。

民営化とコンセンション方式の違いとメリットは?

まず、コンセンション方式とは?

利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式です。

水道というライフラインを民営化したらまずいのではないか?という声も沢山上がっていますが厳密にいうと今回のコンセンション方式というのは民営化ではなくて、施設の所有権は国や自治体が所有したまま、運営権を民間事業者に与えるという方式になるということ。その運営の期間は例えば20年などの年数が設定されています。

民間事業者が運営権をもつわけですから、当然料金の値上げなど懸念点はたくさんありますよね。

ただ根本的に、今の体制で水道事業の見通しが悪い。このまま進むと老朽化した水道管を更新することができなくなる。人員の確保もままらない。予算云々ではなく物理的に水道事業が完全に破たんする可能性もなきにしもあらず。予算と言うよりもむしろ、水道事業の維持、継承が先決ということでこの法案は進められてきたのでしょう。

コンセンション方式のメリットとしては「事業効率性」が向上すると言う事。今現在の体制では料金を値上げしたところで人員の確保や事業を継続していくことが難しい。課題として挙げられている老朽化した水道管や設備の更新を達成するには事業効率性を高くするためのコンセンション方式が最適だったということなのでしょう。

コンセンション方式を導入したから「値上げ」がおこるどうこうではなく、どちらにしろ値上げがおこることは必須条件な気がします。

水道民営化をした海外の料金の値上げに失敗の声多数?

ところで、浜松市はコンセンション方式を採用し動き始めている自治体です。

ヴェオリアウォータージャパンという会社との契約の様です。

それで、料金の値上げについて日本初の試みを行っている浜松市の「浜松市上下水道事業における官民連携の取り組み」というページにて参考になる文面がいくつかあるので引用してみます。

今後、料金収入が減少していく中で水道施設の更新に多額の費用が必要となりますので、大幅な値上げは避けられない状況です。運営委託方式を導入すれば、値上げ幅を一定程度抑制する効果が期待できます。なお、心配されている運営委託方式を導入した時の水道料金については、浜松市水道事業給水条例で上限を設定し、その範囲の中で民間事業者(運営権者)が設定することを想定しています。そのため、上限の設定や改定を行う場合は議決が必要になりますので、民間事業者(運営権者)が独断で上限を超えた値上げをすることはできません。

浜松市水道事業給水条例で上限を設定し、その範囲の中で民間事業者が料金を設定する。ということなので、いきなり10倍になったりはしないでしょう。

独断で決定はできないが、今後上限の設定を行う場合は議決が必要という文面をみると、どうなっちゃうかは分からないですけどね。まあ、描いたとおりの青写真のまま事が進むのか?それは誰にもわかりませんが、個人的に値上げは仕方ないんじゃないかなーと思うんですよね(法外な値段にならなければ)。それよりも、問題点の悪化した施設の強化をどうやって達成するかが一番の問題なんじゃないかなと。

パリ市再公営化本当に失敗だったのか?

フランスのパリ市での水道民営化で価格が高騰したなどの失敗事例の話について、これも浜松市のQ&Aが参考になります。

本市の調査では、パリ市が水道事業に民委任型(運営委託方式と同種)を採用していた1985年から2009年の間で、「水道料金」が3.9倍に上昇していたことが分かりました。しかし、このパリ市の「水道料金」の構成が日本とは異なることに留意が必要です。パリ市の「水道料金」は、水道料金・下水道料金・税及び賦課金から構成されており、水道料金が約2.7倍となったことに比べ、公営である下水道料金は約4.5倍、税及び賦課金は約6.3倍に上がっています。つまり、純粋に水道料金にあたる部分の上昇は約2.7倍なのです。そして、この2.7倍になった水道料金は、パリ市が出資する第三セクターからの用水供給部分と民委任型の小売部分に分かれていますが、その用水供給料金は同時期に約3倍に上がっています。このことから民委任だけが原因で水道料金が値上がりしたとはいえないと考えます。また、有収率(※)も78%から96%に改善していますので、民間事業者が投資を怠っていたということも正確ではありません。むしろ必要な投資をした結果の値上げであるのではないかと考えます。

浜松市の肩をもちたいわけではないんですけど、パリ市の価格高騰が失敗したという記事がたくさんあるのですが、公営の下水道料金も4.5倍になっていたんですねえ。

「有収率」というのは、料金徴収の対象となった水量の割合のこと。漏水等が多いことを意味し、施設の健全度が低いことを意味する割合。

つまり浜松市のいうとおりで、健全な投資を行った結果なのではないでしょうか。

民間事業者をコントロールできない?

パリ市が適切に関与できていなかったのは、1985年の民委任型契約に「要求水準(※)」が存在していないことが原因だといわれています。日本の運営委託方式の制度では、契約で適切な「要求水準」を定めることが不可欠ですので、パリ市の事例はそのまま当てはまらないと考えています。

そもそも民間企業も赤字でボランティアなんてやってる場合じゃないですし、本来なら独占事業ならば、がんがん値上げして、サービスを解約する人はかってにすればよいという考えでも問題はないのですが、いかんせん「水」ですからね。インフラですから。

そんな暴挙にでられたら終わりですよね。

それをコントロールできなければいけないのですが、パリ市の失敗は、「要求水準」を定めていなかったと。これは確かにそんな気がする。というか「要求水準」を定めていなかったってそれは失敗して当然なのではないか?

コンセンション方式が古い、いままで失敗が多いのになぜ?と騒がれていますが、こういった昔の他国の失敗を糧に改善した内容であることからうまくいけるんじゃないのかなあと思えてきましたね。

実際思うんですけど、パリ市の民営化って失敗だったんですかね?物価の上昇や公営の下水道料金も4.5倍になっていたという事実をみると、逆にその当時、水道代が値上がりしたのは民間事業者の責任ではなく、必然であった。

それをなんとなく民間事業者のせいにして、国的にいいとこどりじゃありませんかね(笑)

だって、契約期間切れて、再公営化したって民間企業が水道管とかがんばって変えてくれてありがとう。って感じじゃないですかね?

んまあ、個人的にそこまで心配する話かなあと思えてきましたね。一気に日本全国の自治体がコンセンション方式とるわけじゃないでしょうし、むしろ黒字の自治体は変更する必要はないでしょうし、民間企業が逆にうま味があるかどうかというラインを保って消費者の我々に大きな負担が無い用にという理想的な状況は果たしてくるのか?って感じですけどね。

水質基準は水道法のままだから安心か?

コンセンション方式により、運営は民間が行う事となる懸念点としてもう一つの不安が「水質」が悪化するのではないか?という話。

これどうなんでしょうかねえ。運営は民間に任せると言っても、日本の水道法の水質基準51項目は変わらず存在するわけで、水道法に沿って管理・責任を負わなければいけないわけで、コンセッション事業の許可をうけた事業者はそれをしっかりと実行しなければいけないわけですよね。

それに先の浜松市の話の通りですが、

“国は、水道の基盤を強化するため、基本方針を定めることとする。”

“最低限の生活を保障するための水道の経営について、市町村が経営するという原則は変わらない。”

という条件付きですから、あたりまえですが、すべての自治体で今までの水質基準を求めていくはずです。

また、そういったリスクに関しては自治体が監視、モニタリングを行い最悪の事態が起こる前に予防線をはる処置などは行っていくようです。

あと思うのが、水道事業を行っている企業って別にいままでまったく自治体の仕事を受けていなかったわけではないでしょ。今までも外部委託みたいな形でうけているはず。浜松市とコンセンション事業を行っているヴェオリアウォータージャパンも別に初めて国から仕事を受注したわけではなくずいぶん前から日本の水道事業に携わっている企業ですしね。ココに関しては不安要素はっきりいってないと思うんですよね。

実際こればっかりは絶対に大丈夫とは誰もいえませんけど(蓋をあけてみたら水質悪化しまくった!なんてこともあり得ない話ではないかもですが)

いろんなデメリット不安点について

色々コレ大丈夫なのか?と思う点を調べてみました。

運営を任せた後に数十年という運営権を得ているからサボったら契約解除できるのか?

こちらも浜松市の浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査に関する中間報告という資料から引用していきます。

懸念点で、過去海外で同様の方式で民間企業に委託を行い、途中で契約を解除したため巨額の違約金を支払わなければならなかったケースがあるようです。日本でも同じケースがあるのでは?

・市は、経営から維持管理、改築更新まですべての業務にわたり、契約書及び要求水準書で、業務ごとの具体的な達成目標を義務付け、
その達成度をモニタリングによりチェック
する。
・ 未達の場合は、是正指導・勧告・警告・命令等を行い、未達の状況
等が解消されない場合は、契約解除(違約金も徴収)で対応

やはり、市としては契約書及び要求水準書という目標数値をしっかりと義務としている。そして、その義務を怠った場合、市が民間企業との契約解除をすることができるというリスクコントロールをしています。しかも逆に違約金をもらうという。

でも契約解除になった場合、水道の運営自体どうすんの?

粉飾等による経営破たんや突発的な解散等により運営権者であるSPCが法人として機能停止に陥った場合※は、
水道水の供給が途切れないよう、一旦直営化して対応する。

まあこれは当然といえば当然か。スイッチして運営をできるような体制は整えている模様です。

まとめ

コンセンション方式のメリットとしては先のPDFにも書かれていましたが、「事業効率性」が高くなるということ。あと、運営権売却益が入ることくらいでしょうか。

あと、結構SNS上でコンセンション方式が反対意見が多いので、それと比べると肯定的な事を書いていますが、根本的に今のままで運営してくれるならそっちのほうが私もいいなとは思うんですけど、政府が開示している資料をみるとコンセンション方式も致し方ないのかなーと感じました。でも今後実際どうなるか気になりますねえ。

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